歪な恋人たち。

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歪な恋人たち。

人が沢山いるガヤガヤと騒がしい食堂に、突如女性の怒号が轟いた。 「なんですって!?」 目の前に居る女の子はダンッ! と手をテーブルに叩きつけ此方を睨みつける。 彼女の隣に座る男は周囲を見て慌てて彼女を落ち着かせようと声をかけるが彼女は無視した。 「貴女が恋人で、私は愛人だって言うの!?」 ただでさえ声が高いのに声を荒げると余計耳障りに変化する。 おまけに自分が二番目なのが不服なのか隣に居る彼氏“だった”人に問い詰めている。 「愛してるのは私だけって言ってたじゃない! あれも嘘だったの!?」 「いや、違うんだ! あれは言葉の綾って言うか……」 その言葉にますます女は目を釣り上げる。 下手に真実を言うより少しの嘘を混ぜた方がやりやすいと、何時になったらこの男は学習するんだろうか。 そう思いながら頼んだフルーツにフォークを突き刺し咀嚼(そしゃく)する。 此方の騒ぎに注目して居た学生達も、騒ぎの中心が僕らだと気付くと何事も無かった様に食事を再開する。 誰もこの状況に違和感を覚えない。 この光景はこの大学じゃ珍しい光景じゃない。なんせ僕の彼氏は一週間の頻度で浮気を繰り返すから。 おかげで僕らはキャンパス内でも有名なカップルになってしまった。主に浮気相手の所為で。 僕が彼の浮気を咎めた事は一度も無いが、何故か彼の浮気相手は浮気をした彼ではなく僕を責めに来る。 正直鬱陶しい事この上ない。僕は全く関係ないのに何で巻き込まれてんの。 二人の喧嘩を気にせず食事を再開した僕を見て彼氏である蒼祐が助けを求める目で見て来た。 けれど…… 「もう良いわよっ!」 バチンッ! と凄まじい音がしたので思わず視線を向けると蒼祐の頬にもみじ型の手形があった。 あーあ。と内心ため息を吐き呆れていると女は荷物を持って去って行った。 哀れみの視線を彼に向けると蒼祐は僕の隣に移動して来た。 「痛ってー。あの女加減ってもんを知らねーのかよ」 先程までの弱々しい彼は居らず、代わりに不敵な笑みを浮かべる彼が居た。 黙って保冷剤を渡すと彼も無言で受け取る。 「結局今回も破局か……」 何気に呟いた言葉を蒼祐はしっかりと聞いて居た様で不満そうに唇を尖らせる。 「何で残念そうなんだよ。美咲は一度も俺を見てくれないくせに」 彼の言い分に思わず吹き出した。更に蒼祐の優美な顔が歪む。 「ごめんごめん。でも次は期待してるよ」 「……何時になったら俺の事認めてくれんの」 弱々しい声音に対し励ます為に頭を撫でた。 彼氏にした時点で認めている事に気付かない彼との歪な関係はこれからも続く。
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