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1-1. もはや恒例行事
カリカリとリズミカルにいろいろなところから響く、シャープペンシルの芯が紙と擦れて削れていく音。
時折シャーペン自体が机とぶつかる音がしたと思えば、今度は消しゴムが紙の上を滑る音。
こういうような音に気を取られているようでは集中力が欠けていると指摘されても仕方ない気はするが、ある種の心地よいBGMとして耳に入ってくるのであればまだきっと大丈夫だろう。
そう思いながら、自分の目の前に広がっている物理の問題の途中計算式を、ほんのりため息まがいの吐息と二重線で上書きした。
「あれ? 間違ったの?」
向かい合わせにした机。ボクの右隣に座っている朝倉和恵が訊いてきた。
「んー……、いや、ちょっとアタマごと整理するイメージ」
「なーる」
そう言って和恵さんはすぐに自分の手元にある問題へと戻った。
何だか久々に有機的な音を――つまり声を聞いたような気がした。
月雁高校の第一音楽室。
吹奏楽部に合唱部と、この界隈有数の実力を持った音楽系の部活動を有するとは思えない程度に、静かだった。
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