1-1. もはや恒例行事

4/8
前へ
/82ページ
次へ
 まともな返事をする間もなく、机に抑え付ける間もなく、するりとボクの手元を離れていくノート。  はーなるほどなるほど、とか言いながら神流とエリーは合っているかどうかの補償もない解答を自分のノートの端っこにメモし始める。  間違っていても知らないぞ。  夏休みの宿題みたいに、適度に中間式を書き換えるくらいのことはしておいて欲しいところだ。  ――いや、そういう問題じゃなくて。 「ちょっと、一旦返してくれ。問題解きかけなんだ」 「こっちだって写しかけなんだから黙って」 「……せめてもう少し、参考にして解いてるふりくらいはしてくれよ」  そんなことだろうとは思ったけれど。  知っていたけれども。  ポーズというか、形式だけでもそう見えるようなことはしておいてもらえると、こっちの心象に関わる。 「あー、そっか。そういうこと……」 「え? 何が何が?」 「ほら、これさぁ」  そうしているうちに、神流とエリーが意外すぎるほどのマジメモードになってしまった。  突然キャラ替えみたいなことをしてくるのは止めてほしい――いや、マジメなことは悪いことじゃないんだけれど、そうじゃない。  そういうタイミングじゃない。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加