1-9. 浮き足立つ僕ら

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1-9. 浮き足立つ僕ら

 教室内の空気が少しずつ浮き足立ってきているような雰囲気を五感すべてで感じてみる。  話している内容は次の地歴のテスト範囲についてが七割で、残りは学校祭準備について。  今年で二回目になる前期中間考査は、やっぱり今年もこうなるんだなぁ、とか思いつつ、いつものパン屋さんで買ったパンにかじりついた。  糖分補給が大事だという、自分への言い訳のような甘さの練乳クリームが挟まったフランスパン。  カリッとした食感もさることながら、このクリームが絶妙。  甘いけれど、度が過ぎない。  きっちりとしたミルク感もあって、大きいけれど食べ飽きしないのだ。  ヘッドホンをしつつ、左手にパンを持って、自前の日本史ノートをめくる。  用語集の中で重要そうな語句は逃さずに記載をしたはずだ。  少しマニアックな――銀ちゃん先生が好んで入れてきそうなところも、ある程度は網羅したつもりだ。  余程のことがない限り、そしてこの記憶がどこかへ吹き飛んでしまわない限りは、赤点などとは無縁。  暗記系の科目はそれくらいの状態にしておかないと、昔から居心地が悪かった。 「んー……」
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