1-9. 浮き足立つ僕ら

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「あはは……」  子どものわがままを窘める親みたいなことを言う大輔に、うんうんと満足そうに頷く二人。  そして苦笑いの亜紀子。 「とりあえず、一つ前に戻ってくれ」 「はやくー」 「待て待て」  悪びれることなく続ける祐樹とすみれ。  さすがにそこまでの面倒を見たくは無い。 「待てお前ら。ちょっとは人に勉強させる気はないのか」 「瑞希(みずき)に限っては大丈夫だ」  ぐっと力強く親指を突き立ててくる大輔。  いや、そうじゃない。 「頼むから、それは自分に対して言ってくれないか」 「オレは自分が責任を取れることしか言わん」 「じゃあ、赤点取ったときにはどうやって落とし前付けてくれるんだ?」 「大丈夫、お前は取らない」 「……だからさぁ」  ダメだ、押し問答にしかならない。  テスト前からおかしなところで体力は使いたくないので、泣く泣くノートを彼らに明け渡すことにする。 「あ、そうそう。書いてて思ったんだけど、コレなんで黄色文字にしてんの? 用語集だと難関私大の入試で出てくるかどうかみたいな位置づけになってたけど」
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