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Prologue
戦場の音。英雄たちが雄叫び、炎が巻き起こる。
死ぬことに躊躇いの無い場所。
そんな場所で一筋の光が走る。
「…………」
黒い甲冑を着た人物は戦場の屍山血河の頂点と立ち、手に握る刃こぼれの酷い剣を振るい襲い掛かってくる敵兵を斬り捨てる様な行為を続けている。
黒い甲冑が一歩踏めば、敵が現れもう一歩踏めば、敵が捨てられる。
そのような行為をまるで永遠の様に続いて、何度も剣を振る度に何度も、何度もその風景が漏れ出すように見えていた。
戦いは終わらず、人を使い捨てる様になっていたが、黒い甲冑の者はそれを必死に抵抗するように剣で振り続けていた。
パキンッ!
すると軽い鉄の音が聞こえ、黒い甲冑が持っていたボロボロの剣は綺麗に真ん中から折れており、跳ねた剣の欠片は戦場の風に乗るようにゆっくりと流れる。
「--------------------!!」
その瞬間を狙い、再び現れた有象無象の敵兵をその瞳に捉えた瞬間、黒い甲冑の人物は手に持っていた折れた剣を襲ってきた敵兵の首目掛けて思いっきり突き刺すと、即死と行かなかったのか悶え苦し見始める。
どくどくと首から流れる赤い液体を抑えながら後方へと下がろうとして、手に握っていた剣を敵兵が落とそうとすると黒い甲冑の人物はその瞬間を見逃さず、敵兵が落とした剣を宙で手に取り、そのまま振り上げる。剣は敵の身体をバターを切るかのように真っ二つにすると、ぼとりと重い音を鳴らしながら地面に倒れこむ。
だが敵はこれだけではなく、次から次へと敵は襲い掛かってくる。
それらを黒甲冑の男はまるで、それらをゴミの様に斬っては投げ、貫いては捨て、跳ねれば転がしをずっと続けていた。徐々に多くなる敵の数に対して、黒い甲冑の人物は疲れは一切見せずただ淡々と機械の様に人を殺していた。
「~~~~!!?」
何かを泣き叫び逃げ出そうとする敵兵の将と思わしき人間がいたのだが、黒の甲冑を着た人物は何一つ逃さないただの殺戮兵器となった今、誰一人として『敵』は逃がそうとしなかった。
必死に何か語り掛けてきていたが、黒の甲冑の人物は何も言わずただ冷徹な目でいつの間にか手に持っていたボロボロの槍で敵の喉元を勢いよく貫いた。どくどくと流れる敵の首元から流れる血液は徐々に戦場へと広がっていき、染み込んでいく中、死屍累々のこの場所で黒い甲冑の身に纏っていたその人物は静かなる瞳で戦場を見渡すとそこには、多くの死臭と血の風、そしてなによりも腐敗と退廃のその風景が兜の隙間から垣間見え、その人物の瞳にへと強く焼き付かれていた。
だからと言って平和を求めるわけでもなく、争いから逃げたいわけでもなく、ただ無関心に似たような視線は、戦場にへと上り詰める狼煙の先、戦争とは無関係そうな星空を眺めている。
だが多くの人はその甲冑の人物はこうでもいうだろう。
『もし、望むものなら平和を見たいと……』
そう多くの人が望み、考え、願う中、ただ黒い甲冑の着たその人物は、この戦場や誰かが願う無価値な平和に興味を持たず静かに寂れた地の果てを見ていた。
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