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最寄り駅では、彼が既に待っていた。近づいていけば、「よっ」と手を挙げる。 「晃汰(こうた)」 先輩、と呼ばなくなったのは、いつだったっけ。彼も慣れた様に「梨々香」と呼ぶ。 「またそのTシャツ?」 「気に入ってんの。そういう晃汰も、いつもと一緒じゃん」 「気に入ってんだよ」 彼の服も、見慣れたグレーのTシャツに黒スキニーだった。細身で良く似合ってるのがムカつく。 「行こうか」 そう言って、目的の場所行のバス停に向かおうとする彼のTシャツを後ろから引っ張った。振り向いた彼に、提案する。 「ねぇ、……歩いてかない?」 「……いいよ?」 「恋人最後の日だし、散歩デート」 「……ははっ」 じゃあ、持って歩ける飲み物でも買おうか、と一番近くのカフェに立ち寄った。カラン、と音を立ててドアを開く。 何度も何度も来たこのお店。 高校生の時は勉強をしに。大学の時は、旅行の計画を立てに。社会人になってからは、家に行く前の飲み物を買いに。 ここに来る目的もこんなに変わっているのだ。私達の関係が変わらない訳が無い。
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