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「ハニーカフェオレでいい?」 「うん」 彼は、いつも同じメニューを頼むから、もう当たり前の様に注文できるようになった。 「たまには違うの頼めばいいのに」 「そうなんだよねー、でも、いざここに来ると、これが飲みたくなっちゃうんだって」 そう言って笑う顔も、いつか変わってしまうのだろうか。変わらないで欲しいな、と少しだけ思った。 「梨々香?」 顔を覗き込まれて、ふいにどくん、と心臓が鳴った。珍しい。最近は家族みたいに何も思わなかったのに。最後だからかな。 「はい」 「サンキュ」 受け取った彼は、「ん」ともう片方の手を差し出してくる。そっと右手を重ねる。ゆる、と伝わる熱が、柔らかくて、安心する。 「あれ、雨だ」 歩き出してすぐに、ぽつぽつと雨が降り出した。離れていった手のひらに、未練が残った私の指。振り切る様に傘を開いた。
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