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「初めて、キス、したよね」 「うわ、憶えてんのかよ、恥ずかしいなぁもう」 懐かしいね、と笑った。 何処か切ない空気が流れているのは、雨のせいだと思いたい。お互いに、緊張しているのだ。恋人として過ごす最後の、この1日に。 だから、それを誤魔化す様に、名を呼んだ。 「晃汰」 「ん?」 「……キス、しよ」 「え? 今?」 「……今」 傘の中の、キス。私達の始まりのキス。 だから、恋人の最後のキスは、傘の中が、いい。 そう言ったら、彼は仕方ないなぁ、と笑って、私に傘の柄を渡す。そのまま空いた指を私の頤に滑らせた。くい、と持ち上がる顎。慣れた様に重ねられた、唇。 「……ん」 柔らかくて、甘い、キス。 恋人のこのキスを、私は、一生忘れない。
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