嫌われ・・・え?Ⅱ

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嫌われ・・・え?Ⅱ

会長の好意に甘え初めて1ヶ月がたった。寮が同室になったことでゆっくり眠ることができ、本当に会長には感謝しかない。 「凪君、今日はこのへんにして早めに終わりましょう。」 「は、はい。先生、今日もありがとうございました。」 会長の配慮で保健室登校になったけど、保険医の高松先生はこんな僕にもとても優しくて、いつもお世話になっている。学園生活はまだ怖いけど、潤君や生徒会の方々に会うこともなく穏やかに日々を過ごしていた。会長は生徒会行事の仕事が忙しく、帰りも遅い。心配はかけたくないため、最近は一人で登下校していた。 「ああー!凪じゃん!全然帰ってこないし、どこ行ってたんだよ!」 「じゅ、潤君、いや、あ、あの…僕、部屋変わって…」 「なんでだよっ!俺達親友だろっ!相談もなく変わるなんて酷い奴だなっ!」 「ご、ごめん。」 「潤?どうしたんで…あなたは…」 「ひっ、副会長様…あの、」 「最近みかけていなかったので、いなくなったと思っていました。そういえば会長に擁護されたんでしたっけ?」 「凪、凱に迷惑かけてるのかっ!?凱は俺のなんだぞ!さっきもお菓子くれたんだ!」 「で、でも会長様が、同室にしてくれて…」 「凱と同室なのか!?最近、凱が疲れてるのは凪のせいかっ!凪、どんくさいからなっ。」 「そうですね。会長はただでさえ仕事が忙しいですから…部屋に帰ってあなたがいたら、休めないですよね。」 「凱が可哀想だろっ!凪、でていけよ!」 「で、でも、僕、行くところが…」 「何言ってんだ?凪は俺と一緒の部屋がいいだろっ!」 「え…いや、ちょっ「じゃ、早く帰って来いよ」…」 「ふふ…、また楽しくなりそうですね。」 2人が立ち去った後も僕はしばらく動くことができなかった。また、あの辛い日々が始まるの?僕のせいで会長様は無理してるの?僕は足を引っ張って迷惑かけて…。やっぱり僕は邪魔な存在なんだ。やっぱりあの時に辞めるべきだった…いや、遠くに行くべきだったんだ。会長様には十分すぎるくらい助けてもらった。今、僕が会長様の為にすることは目の前から消える事だよね、重荷にはなりたくないんだ。 あれから1週間が過ぎた。 学園では小さな嫌がらせが増えたけど、まだ僕は会長様の部屋に居座っている。迷惑にならないように相談もしていない。心配かけたくないから頑張って保健室にも登校している。高松先生も心配してくれてるけど笑顔で対応し、何も話していない。夜は会長様が返ってくる前にベッドに入るようにしている。お世話になってるのに僕、本当に最悪。会長様もこんな僕のことなんて嫌いになったよね。…もともと好きでもないか。あれは傷ついた僕の為に言ってくれただけだよね。もう、解放してあげたい。 side:凱 最近、凪の様子が変だ。高松も心配してるみたいだが、凪は何も話さないらしい。しばらくは落ち着いていたが、魘されることも増えてきた。最近、忙しくてゆっくり話す時間がないのも悪いが、なんで何も相談してくれないんだ? side:end 「おはよう、凪。最近、学園はどうだ?」 「おはようございます。凱のおかげで楽しいですよ?」 「凪、辛いことがあるのに無理して笑わなくていい。どうして相談してくれないんだ?そんなに俺は頼りないかよ…。凪のことは好きだけど、そんなところは嫌いだ。」 「っ…僕は大丈夫ですよ?凱、毎日忙しくて疲れてるから、僕は心配です。」 「もういい。夜、話があるから、起きて待っててくれ。」 僕は凱が出て行ったドアをみつめていた。悲しい顔してた、僕はまた悲しませちゃった。話って出ていけってことだよね。きっと優しい凱だから、出て行ってほしいけど今まで言えなかったんだ。きっと今日も言いにくいと思う。これ以上迷惑かけられない、もう僕から終わりにしよう。 「凪君?今日は何か考え事ですか?ぼんやりしていますよ?」 「え?ごめんなさい、先生。少し寝不足なだけで、大丈夫です。」 「そうですか?少し休んでから帰ってもいいですよ?」 「もう僕は大丈夫なので、本当にいつもいつも、、、先生にも今まで迷惑かけてごめんなさい、ありがとうございました。僕、帰りますね。」 「凪君…?」 side:高松 最近、凪君の様子がおかしい。今日は一段とおかしい。まるで、最後のあいさつみたいな言葉を残して帰宅した凪君。これは凱君に伝えた方がいいですね。 side:end 先生と別れてから、僕は凱の部屋には戻らず、あの図書館にきている。もう、僕には戻る資格はない。私物も処分しちゃったから薄着で寒いけど、夜が明けたら学園を出ていこう。本当に今までごめんなさい…ありがとう。 高松から連絡をもらい、早めに帰宅したが普段ならいるはずの時間に凪がいない。全部の部屋を探すがいない。まだ帰ってないのか?いや、高松は帰ったといってたな…どこ行ったんだ?そこでふと違和感を感じた。ここに住み始めて少しずつ増えていた凪の私物がない。最近様子が変だった。今日の朝も相談してくれなくてイライラして言い過ぎた。高松も様子が変だと言ってた。早くみつけないとっ!俺は高松に電話して協力してもらった。 「凪君が行きそうなところは!?」 「凪が行きそうなところ…っあ、図書館!俺はあそこで凪と出会ったんだ!」 急いで図書館に行くと、ソファに寝ている凪をみつけた。前と同じだ、安心した俺は凪を抱きしめてその冷たさに驚いた。 「お、おい!凪っ!起きろっ!」 「……っ、あ、れ?凱?あ…また、迷惑かけましたね。」 「そんなことはいい!こんな薄着で何してんだっ、早く帰るぞ!」 「もういいんです。お願い、このまま放っておいて下さい。お願いしま、す。」 涙を流しながらそう言った凪はそのまま意識を失った。高松が凪を運ぼうとしたが、手を離したら離れて行ってしまいそうで、渡せなかった。抱え上げた凪は以前よりも軽くて、初めて食事が摂れていないことを知った。医務室に運んで温めて、点滴投与をして、今はなんとか落ち着いている。栄養失調と低体温らしい。部屋に戻ってからも手を離すことが出来なくて、強く握りしめたまま眠ってしまった。 「ん…あれ、ここは凱の…」 「っ、凪!凪、起きたのか。よかった…」 「凱?なんで…」 「凪は図書館で低体温で倒れたんだ。死にかけたんだぞ?心配した。」 「…また、生きてたんですね。本当に僕ってだめですね。」 「何言ってんだ!そんなこと言うな、俺は凪がいなくなって本当に心臓が止まるかと思ったよ。お願いだから、心配させないでくれ。」 「僕がここにいる意味がわからなくて。凱は仕事で疲れているのに、帰って僕がいると休めないでしょう。僕は凱に救われました。もうあなたの邪魔になりたくない。」 「俺は邪魔だなんて思ってない!なんでそんなことばかり言うんだ。」 「潤君が言ってました。会長も潤君といるほうが楽しいでしょ?みんなそうだから。僕といるようになって会長は疲れてるって、早く出て行けって。本当に、その通りだと思いました。だから、あなたに辛いことを言わせる前に出ていこうと思ってあそこに。明日出ていきます。今までありがとうございました。」 「凪…少し落ち着こう?いろいろあって混乱してる。とにかくもう少し寝てろ、食事作ってくるから。」 凪は大人しく寝てくれた。最近様子が変だったのは転入生が関係してたのか。凪がせっかく元気になってきてたのに、またあいつらに邪魔されるのか。っくそ!凪が出ていくことは許さない。きっと混乱してるだけで少し眠れば落ち着くはず。 …この時の俺の考えが間違っていたんだ。 最近、夢をみる。みんなが僕を責めてくる。夢か現実かもわからないほどリアルだ。 「凪!また凱に迷惑かけたな!ほんとどうしようもないなっ!」 「まだいるんですか?いつになったら出ていくんですか?」 「凪…俺は、お前が何考えてるかわからない。もう疲れたよ。」 ここで僕は目を覚ました。そっか、やっぱり凱は疲れてたんだね。僕ひとりがいないだけでみんなが幸せになるなら、僕が出ていくのが一番だ。でも責任感の強い凱だから、また僕を探すかもしれない。もう解放してあげたい。僕は手に刺さっていた点滴を引き抜くと、無意識にテーブルの上のハサミを手にし、手首にハサミを滑らせた。溢れてくる血液を見ながら、痛みと安堵から涙が溢れた。 「今まで迷惑をかけました。最後までごめんなさい、さよなら。」 食事の用意ができた為、そろそろ凪を起こそうと寝室に来た俺は絶句した。 「な、なぎ?おいっ!何してんだよ!おい!しっかりしろ、起きろ、凪っ!!」 ベッドは血に濡れ、凪は笑ったように穏やかに寝ていた。いくら呼び掛けても反応しない凪に恐怖を感じた。急いで高松を呼んで処置してもらった。深い傷もあるが急所は外れており、命に別条はないとのこと。それから凪は眠り続け、3日目にやっと目を覚ました。 「なん、で、僕生きてるの?死ぬこともできないの…。もう、どうしたらいいの。」 「凪、なんで死のうとしたんだ。」 「夢で…夢で、みんなが言ったんです。僕がいることが迷惑だって。会長も僕が何考えてるかわからないって、疲れたって。だから僕は出ていこうと思ったけど、会長は心配して探すかなって。だったらもう死んでしまおうって。それしかないし、それが一番だなって。」 そんな悲しいことを凪は笑いながら言った。何でこいつがこんなに悩んで、苦しまないといけないんだ。 「約束しただろ!俺が飽きるまでは離れないって、俺が守ってやるって。俺を信用してくれよ。俺は、責任感とか同情から凪と一緒にいるわけじゃない。凪の事が好きなんだ、愛してる。お前は違うのか?」 「僕も、僕も好きだけど、釣り合わない。迷惑ばかり。もうどうしたらいいのかわからない。心潰れそうで。頑張った。頑張ってたけど、邪魔って言われて、自信なくしちゃって。もう無理です。」 「その気持ちを相談してくれ。俺にも凪の悩みを背負わせてくれ。凪が俺を思って一人で抱え込んでるのをみるのは辛いんだ。」 「気持ちを伝えてもいいの?会長の負担にならない?面倒なんてみてほしくない。もう解放してあげたい。」 「負担なんか感じたことない。逆に縛り付けてくれていい。凪の事だけ考えて凪の為に生きたいんだ。それが俺の幸せ」 「会長の幸せ?」 「そうだ。なんでも相談してくれ。凪、愛してる。もう悩むな。」 「僕は今まで一人で、あ、あぁあー…ごめん、なさい。っ、ありが、とうっ会長。僕も、愛してるっ。」 「もう泣くな。それと、名前で呼んでくれ。まずは、そこから始めよう?」 「凱っ!」 それから僕は少しずつ凱に思いを伝えるようにしている。たまに死にたくなる時もあるけど、僕が話すと凱は笑顔で抱きしめてくれる。こんな僕を何度も何度も救ってくれたあなたのために、あなたが飽きるまでは、あなたと一緒に生きるって決めたから。そんなこと言ったらまだ怒られるかな。少し前の僕だったら考えられないけど、僕は今、あなたの隣で幸せです。
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