嫌われ・・・え?Ⅰ

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嫌われ・・・え?Ⅰ

「頭痛い・・・。」 今日は起きた時から体調が悪かったんだ。特待生の僕は授業の心配もあったけど、無理してもいいことはないと思って学校を休もうと布団に入りなおした。 「おーーーーい!凪!!早く学校行こうぜ!」 「ごめん、潤君。僕、休むか「ズル休みはダメなんだぞ!!待っててやるから早く準備しろよ!、、、うん。ごめん。」 僕は怠い体に鞭打って登校した。あ、自己紹介が遅れてしまってすみません。僕は佐藤凪。平々凡々な容姿で特待生としてこのお金持ちが集まる王道全寮制男子校に通っている。そしてさっき大声で僕を呼んでいたのは、最近転入してきた鴻上潤君。彼がまた王道転入生で生徒会や爽やか君、不良君などなど、学園のイケメンズが次から次に信者となっている状況。この学園は同性愛が常識なんです。僕はそんな彼とたまたまクラスが一緒で、たまたま寮が同室になっただけ。正直とても苦手でなるべく近づかないように、関わらないようにしているけど彼から「親友」扱いされている。信者達は平凡な僕が彼の隣にいることが許せないみたいで、彼が来てから毎日暴力を振るわれている。友達もみんな離れていって…。きっと今熱があるのも、昨日の副会長と会計、書記からの暴力が原因だと思う。僕にはどうすることもできないから、耐えるしかない。 「やっぱり今日は無理だ。帰ろう。」 3限までは頑張ったけど、本格的にクラクラしてきた僕は寮に戻りすぐにベッドへダイブした。 「んぅ?今何時かな・・・、喉乾いたな。」 水を飲もうと共有スペースに出た瞬間、目の前に転入生と会長以外の生徒会役員が勢ぞろいしていた。 「ああー!凪!何で俺を置いて帰ってんだよ!サボりはダメなんだぞ!謝ったら許してやる!」 「この平凡、潤君に迷惑をかけたんですか?(っち、昨日のじゃたりなかったか?)。」 「大体君さ、まだこの部屋にいるわけー?早く出てってよ。」 「潤、ゲーム、再開、、平凡、出ていく。」 「そうですね。潤君?この平凡は用事があるそうで出かけるみたいですよ?」 「なんだ、用事があったんだな!凪はぼんやりしてるから!早く戻ってきてゲームするぞ!」 「潤君はやさしいですね。」 そう言った副会長は玄関まで僕を強めに引きずり、「二度と顔見せないで下さい。」と笑って吐き捨て、僕を外に押し出した。 少し眠ったからといって僕の体調は最悪のまま。立っておくのがやっとの状態。 「僕が何したっていうんだよ…、とりあえず休めるところ、、、図書室のソファ…か。」 図書室なんて使う生徒は少なく、やっとの思いでたどり着いた時は誰もいなかった。ここにはソファーが置いてあるため、最悪ここで夜を過ごすこともできる。全身の痛みと頭痛がピークに達した僕は、ソファーに倒れこむようにして、、、そこで意識が途絶えた。 side:凱 時刻は20:32 「っち、戸締りだりー。」 学園内の戸締り中に一つだけ電気のついた部屋をみつけた。ここは学園でも人気のない図書室だってのに・・・。 「ここで最後ってのに電気ついてやがる。消し忘れか…あ?こいつ、確か潤の同室の平凡。んでこんなとこで寝てんだ?薄着だし・・・」 寝てることもイラつくが、そいつが潤の周りをうろつく平凡ってことにもさらにイラついた俺は乱暴に肩を掴み声をかけた。 「おい、おいテメェ!起きろ!」 「んっ、痛っ、、、っ、かいちょ?」 「おい平凡、んなとこで寝てんじゃねぇ!邪魔なんだよ。」 「邪魔…、っご、ごめんなさっ。すぐに――ーっ。バタッ。「おいっ!?何してんだお前…あ?こいつすげー熱じゃねぇか、、、っち。」 俺の言葉で勢い良く立ち上がった平凡は走り出した瞬間、大きくふらつきそのまま倒れた。呼吸も荒く、高熱ときた。こいつは嫌いな平凡だ。いつもの俺だったらそのまま放置していたはず。今日の俺はおかしいんだ。意識を失った平凡を抱えるとその軽さと涙を流していたことに驚いた。 「とりあえず、俺の部屋に運ぶか…。」 sede:end 「んっ…、ここは、どこだろう。」 頭の上の冷たさで意識が浮上した。倦怠感と全身の痛みはあるが熱は少し下がっているよう。見慣れない天井と部屋に混乱してたときに、ドアが開く音がした。 「か、会長様?」 部屋に入ってきたのはまさかの会長で、初めてここが会長の部屋であることに気づき、サーーっと血の気が下がった。 「す、すみません!すぐにおきます、、、、っ!」 「馬鹿が、急に起きんじゃねぇ!いいから寝てろ!。」 会長はそう言って僕をベッド上に引き戻し、丁寧に布団をかけると出て行った。何がなんだかわからない僕は混乱していたが、睡魔には勝てずにそのまま、また寝てしまった。夜中に高熱が出た時に会長が着替えさせてくれたり、汗を拭いてくれたり、氷を取り換えてくれたことをぼんやりと覚えているが、体を動かすことができない僕はされるがままだった。翌朝、幾分か復活した僕は迷惑にならないようにと自室に帰ることを申し出るが却下され、現在は会長が作った雑炊を食べている。 「お前は何であんなとこで寝てたんだ?ずっと調子悪かったんだろ?」 唐突に会長に聞かれ、昨日の朝からの出来事をポツポツ話した。 「お前のその、、、全身の怪我も関係あんだな?」 「っ…。」 僕は静かに頷いて、泣きそうになった。自室に帰るとは言ったけどそういえば、帰るところなんてないんだっけ?あんなところには帰りたくない。もう・・・「疲れたな…。」会長は僕の呟きに一瞬目を見開いたが、優しく頭を撫でてくれて眠るまで一緒にいてくれた。 こいつの汗を拭いていた時に見た体の傷は、古いものから新しいものまでたくさんあり、痛々しかった。湿布を貼り手当してやった。「ほんと俺、どうしちまったんだ?」普段は絶対にしない自分の行動に戸惑うが、嫌な感じはしない。こいつは眠っている時も魘されていて、頭を撫でてやると幾分か落ち着くようだった。あの呟きは…、「本心なんだろう。目を離したらどっかいっちまうな。」 会長の部屋で4日間過ごした僕は、だいぶん調子を取り戻した。部屋に戻ることを話すと、「この部屋にいろ。手続きしといてやる。」と言われ僕は焦った。そんなに迷惑はかけられない。僕は会長の事を怖い人だと勘違いしていた。この学園で唯一僕に優しくしてくれる人がいた、この事実だけで僕には十分だ。 「会長、僕、学園を辞めようと思ってます。どこか遠くに行こうと思っていて…、「ダメだ。」、、、え?」 「ダメだ。お前が好きだ。手放すことはできない。」 「え?好き?」 「そうだ。これからは俺が守ってやる。必ずだ。だから離れないでくれ。」 「僕、そんな人間じゃありません…、会長はもったいない。僕は何も返せません、、、。」 「そんなのいらねぇ。お前は頷くだけでいいんだ。なぁ、ダメか?」 「…かいちょ、が、あ、あきる、まで、、ぼっくは、、一緒にいま、す。」 思いもかけない会長からの言葉に僕は涙が溢れてきて、もうどうしようもなくなってしまった。そんな僕を優しく抱きしめてキスをくれた会長を、僕が嫌いになることはないと思います
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