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始まりは雪の夜
雪。
それが私の名前。雪の降る日に生まれたから。単純な理由だ。
でも、もしかすると、童話の白雪姫みたいに雪のように白い肌になるようにとの両親の願いも込められていたのかもしれない。今となってはわからないが。
とにかく今の私は、いつのまにか自身の名前と同じもので覆われた白くて冷たい地面の上に倒れていた。
視界一面を覆う真っ白い世界。一見すると儚くて、それでいて冷たい花びらのようなものが、空から絶え間なく降ってくる。周囲が薄暗い事もあり、1メートル先もよく見えない。
あれ? 東京ってこんなに雪積もってたっけ?
どちらかというと、私の故郷を思い出す。冬になるとこんな風に雪が積もって、毎朝雪かき手伝ったっけなあ……
ふと、そんなことを考える。
何故自分がそんな状況に陥っていたのかはわからない。
ただ、しんしんと降る雪が、今や身体を覆うように降り積もり、徐々に体温を奪っていくのがわかる。もう身体に力が入らず、指を動かすことさえままならない。
そこでふと思った。
ああ、もしかして私、ここで死ぬのかな……今日のジーンズ、まだ3回くらいしか履いてないのに勿体ないなあ……。
そんなどうでもいいような考えが頭をかすめたその時
「マスター! またお店の前に行き倒れがいますよお! 今度は黒い猫の子!」
そんな女性の声が響いた。
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