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コンビニが見えてきた。 「あっ」 私は息を飲んだ。 それは照明で明るく照らされた駐車場を真っ直ぐ横切って入り口に入ろうとしたときだった。会計を済ませた四人の男たちが連なりながら、肩で風を切ってのし歩いて来るのが目についたのだ。いずれの男も一目でわかる。法律のラインの向こう側に棲む人間。暴力団員だ。悔しいけれど、高校生の私では初めから勝負にもならない。私は道を開けた。身体を避けながら、私は再び「あっ」と息を飲んだ。目の前の四人の男たちが夢に出てきた暴力団員たちとまったく同じ顔だったからだ。 陰惨な面構えの男。 般若の面そっくりな男。 キツネ顔の男。 四角い顔の男。 忘れもしない。特徴的な顔をしたあの四人の暴力団員たちが、凄みのある顔をコンビニの照明に光らせながら、眉間を険しくしてすれ違って行ったのだ。 私はコンビニの前に立ち尽くしながら、四人の暴力団員たちの行方を目で追った。四人は駐車場に停まっていたドイツ製高級車のドアを開けて車内に消えた。 高級車の隣にタクシーが停まっていた。タクシーのナンバーが目についた。9のゾロ目の9999だ。奇妙なナンバーだ。この手のナンバーは一度目にしたら絶対に忘れない。 休憩中なのだろうか。タクシーの運転手は携帯電話をいじりながら薄ら笑いを浮かべていた。 暴力団員たちの乗った高級車が駐車場の外に出ようとしている。私はタクシーに駆け寄り、後部ドアをこじ開けて強引に乗り込んだ。 「あの外車を追ってください」 「休憩中なんすけどね」 運転手がめんどくさそうに呟いた。 運転手の手にした携帯電話に、私を撮影したバストアップの写真が表示されていた。 夢で見た暴力団員たちを目の前にして、驚きのあまりひょっとこ(・・・・・)みたいな情けない顔をして写っている私。しかもキャミソールの胸元がくっきり鮮明に写っていた。もしもこんな写真がネット空間に流出したらたまらない。 下着を着けなさい。そう言った母親の言葉が今になって重くのしかかった。 自分自身の胸元を見下ろしてみた。キャミソールの薄い布地が隆起した乳輪と乳首のありのままの形を鮮明に浮き上がらせていた。 私は素早く手を伸ばした。瞬きする間もなく、運転手の携帯電話は私の手に落ちていた。 「私を隠し撮りしたな」 「いや、知らんね」 「だったら、これは何だ」 私は運転手に携帯電話を突きつけた。 「いや。何だそれ。俺はそんなもん撮してないよ」 「撮してないのに何で私が写ってんだ」 「さあ。念写とか?」 運転手は惚けながら白々しく笑った。 「外車を追え。そうしたら許してやる」 数秒の間、運転手は考えていた。 「しょうがないな。わかりましたよ」 どうやら答えはすぐに導きだされたようだ。目の前の運転手は見た目ほど愚かではないらしい。 「その取り引きに乗ろう。あの外車を追えばいいんだね。ついでだから運賃はタダに負けとくよ」 運転手はハンドルを巧みに操ってコンビニの駐車場を飛び出し、たちまちの内に高級車の真後ろに追いついた。タクシーは高級車の後ろにピタリとついて離れない。 私は運転手の携帯電話から、盗撮画像を永遠に消去した。
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