「2章・13」因縁のお姫様

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「2章・13」因縁のお姫様

次期王位継承者の候補に入っているジェラルド王子。盛大に婚約のお披露目パーティーを行った。 大きな館を借りて行われたのだが、大勢の貴族が出席して溢れそうだ。 「ご婚約、おめでとうございます!」 祝福の拍手の中を登場したジェラルド王子とエリザベスが歩く。晴れの舞台だった。 「ほら、離れないように。2人とも、迷子になりますよ!」 父親のように連れのパートナーの世話をするのは、紳士と若い貴族。 「パトリシアさん、私も踊りたいです。」 頬を染めた令嬢が、紳士にお願い事。パトリシアは、苦笑い。名前を呼ばれたら変装している意味が無いではないか。 知ってる顔に出くわしても分からないように全員が変装。エドワードは、付き添いで付いてきていた。 「じゃ、ガブリエルさん。俺達もダンスに?」 「はい、喜んで。」 パトリシアは、2人が腕を組んでホールに歩いて行くのを複雑な思いで見る。 いけない、前世の姿で2人を見ている。そんなはずは無いのに。別人なのだから。そう考えて、傍らを見た。 「では、お嬢様。私達も参りましょうか。」 腕を差し出すと、嬉しそうにエレンは手を絡める。エレンの胸がトキメイテいる事など、パトリシアは気がついてもいない。 ドキドキ、ドキドキー。 (嫌だわ、心臓の音が聞こえそうよ。静まれ、私の心臓!) 聞こえたら、私が好きなのが分かってしまうわ。パトリシアさんの中に居る男の人に会えたのに。 変装したパトリシアが現れた時、感激して頭の中でエレンは神様にお礼を言っていた。 願いが叶ったのだ。おまけにダンスだなんて嬉し過ぎます。 どうして、こんなに素敵なの。背の高い端正な中年の男性は、慣れた仕草でリードする。エレンには、夢のようだった。 会場の端から、ざわめき始める。目立つ客が到着したらしい。 「あの美しい令嬢は、どなただ?」 「どこのお姫様なの?」 ざわざわし始めた会場の中に貴族にエスコートされた美しい娘が、ゆっくりと歩いて来る。 出席者の注目を浴びても、堂々とした態度。まるで、一国の王女のよう。 「隣に居るのは、コンラデン侯爵の子息ではないか?」 彼等は、本日の主役であるカップルの前に立った。コンラデン侯爵の子息は、祝福する。 「ご婚約、おめでとうございます。今日は、妹のベルデナットを連れて参りました。」 ベルデナット令嬢は、優雅に膝を折って会釈した。ジェラルド王子は、息を飲む。何をしても、美しいと感嘆して。 「貴殿の妹君と顔を合わせるのは、初めてだ。貴族の集まりは、お好きではないのですか?」 「殿下、妹は病弱ですので控えております。」 ジェラルド王子の隣で、エリザベスは慎ましく立っていた。婚約者が、目の前の令嬢との会話ばかりするのを聞きながら。 その翌日、パトリシアの家で娘たちのパジャマパーティー。勿論、パトリシアは入っていない。 エリザベスが自分の部屋のようにして使っている客間で、食べ物を沢山と広げて楽しい時間を過ごす。 「何なの?ジェラルドったら、お披露目の後に男性ばかりの二次会をやって毒を洩られたの。また、入院してますよのよ。笑える!」 婚約者の不幸を笑う令嬢。自分は毒消しのお守りで逃れている。だが、大食からは逃れられない。 パクパクパクパク、ゴクッゴクッーー。 あっという間に無くなっていく食べ物。お腹いっぱいになったエレンとガブリエルは、見てるだけにした。 ガブリエル「エリザベスさん、綺麗だったわ。」 エリザベス「コンラデン侯爵家の令嬢には、負けましたけど。」 エレン 「そ、そんな事・・、ありませんって!負けてないから。」 エリザベス「いいのよ、分かってるから。そのつもりなのよ。元婚約者は!」 ガブリエル「令嬢のお兄さまは、エリザベスさんの元婚約者でしたわね?」 ガブリエルの言葉にエレンが驚く。ガブリエルは知っていたが、言えなかったのだ。 エレン 「元婚約者って、本当に?」 エリザベス「そうよ。私が気が触れたと言われるまでは、幼い時から婚約者だったの。」 信じられない話だった。双方の親が決めた婚約だったのだが、エリザベスが病気になると即座に婚約破棄したらしい。 それなのに、エリザベスの婚約披露に堂々と出席するとは何を考えているのか。エリザベスは、笑いながら教えた。 「私と婚約破棄して直ぐに別の令嬢と婚約したのよ。めでたく、結婚されましたわ。」 エレンとガブリエルは、心配そうにエリザベスを見る。妙な笑い方をしてるからだ。本当に楽しいのか分からない。 「何年も婚約者だったけど、あの妹君に会ったのは1度か2度だけでしたの。病弱だからだそうよ。それが、出て来たんですもの。面白いわねえ、ふふふ。」 お披露目の場で主人公だったはずのエリザベスが、すっかり、主役を取られてしまった。それも、元婚約者の妹に。 笑ってるけど、本当は、怒っているの?
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