懺悔

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仕事終わり、母から突然電話がかかってきた。 「うたは、じいちゃんがもうあかんかもしれへん。」 それは突然の危篤報告だった。 チェキをあげた日から2年以上が経っていた。 末期にも関わらずよく頑張ったなあ、とか 夢の中の話なのかなあ、とか とにかくすごく冷静だったのを覚えている。 急いで病院に向かうと、親戚が皆集まっていた。 口々に祖父に呼びかけては涙する。 異様な光景に頭は真っ白、私も祖父の名前を呼んだ。 不思議と涙は出なかった。 と、ふと祖父の枕元に何かが置いてあるのを見つけた。 恐る恐る手に取ると、 それは、あの時のチェキだった。 チェキを撮ったこと自体すっかり忘れていた。 私とツーショットのチェキや親戚で撮ったチェキ、 私だけが映っているチェキ、 たくさんのチェキが枕元に置いてあった。 祖母が、 「じいちゃんな、財布に入れて、これ大切にしてたんやで。」 と言った。 私はその日初めて泣いた、。 私にはなんでもないチェキなのに、 ただの日常を切り取っただけなのに、 要らないなら捨てていいよって、 なんでそんなこと言ったのかすごく後悔した。 祖父は辛い治療の中、 時折財布を開いてはチェキを見ていたらしい。 それも、私だけのチェキを握り締めては、 治療に耐えていたという。
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