ただ

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性別、環境、価値観、固定概念が邪魔をする。 ただ側に居たいだけなのに。 音楽を聴きながら僕の隣を歩く女性は幼なじみだ。 少し透明感のある黒髪をなびかせ、新しく買ったピンク色のイヤホンで どことなく上機嫌で音楽を聴いている。 「渚!やっぱこのイヤホン音質いいよ!バイト頑張って良かった〜!」 『良かったね』 気が利いたことなんて言えない。きっとどんなことを頑張ったのとかバイト先ではどう?とか聞けたらもっと凛子と話せるのだろう。 だがどうも僕はそういうコミュニケーションが苦手だ。 そんな僕を理解してくれている凛子とのこの空間はいつも居心地が良い 「そう言えばね!」 凛子が切れ長の瞳をこちらに向けて何か言おうとした時、いつもの馬鹿にした声が遮った。 「よお!おふたりさん!毎日一緒に登校とは仲がいいね〜いつ付き合うんだろうね〜」 ヘラヘラと笑顔を向けてくるクラスメイトの悟だ。 悟に悪気はない。いつものジョークだ。 「そんなんじゃないよー」 笑顔で返し、凛子はまたイヤホンの話を嬉しそうに話している。 僕はこの何気ないやり取りにいつも違和感を感じていた。
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