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あたしにはどうすることもできない。何もできない。
だけど、あきらめることもできない。
行き場のない気持ち。やり場のない思いが心を蝕む。
どうしてもっと早く伝えなかったんだろう。
素直になっていればこんなに辛くなることもなかっただろう。
もしも、まだチャンスがあったなら、今ならはっきり言えるかもしれない。
あいつに、好きだと――。
「――おいっ! こんなとこで何やってんだよ!」
彼女はそこにいた。
桜の木の下でずぶ濡れになりながら膝を抱えていた。
幸い、雨の勢いもだいぶ弱まってきていた。
「えっと、大丈夫か? とりあえず一旦病院に帰ろう、な?」
ついさっきあんな別れ方をした手前、どうも会話がぎこちなくなってしまう。
理由はわからないが、なんにせよまだ怒っているには違いない。
それでも彼女を放っておくことはできない。とりあえず一旦病院に戻ってそれからあとのことは考えよう。
それから、俺の声に反応した彼女が顔を上げると、顔をくしゃくしゃにして涙を流し始めた。
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