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「えっ、えっと、その……」
突然の状況に困惑していると、彼女はゆっくりと立ち上がり、体重を預けるように俺の胸に顔をうずめた。
もちろん、俺はさらに混乱して、おまけに胸の鼓動も急激に高鳴っていく。
「っ!? ……ど、どうした? あぁっ、寒いのか! よし、早く病院に戻ろうっ」
肌は濡れて冷たくなっているというのに、心なしか体が熱く感じる。
彼女がこんなに近くにいることなんて今までなかったせいか、いつもより激しく意識してしまっているのだ。
そんな俺の顔を、いつの間にか泣き止んでいた彼女が見つめていた。
なぜだか、なにか吹っ切れたような表情で微笑むと、瞳に滴を残したまま彼女はこういったんだ。
「あたしね――あんたが好き」
頬を若干紅く染め、それでも俺から目を逸らそうとはしない。
「いつからだかわからないけど、気づいたらもう好きになってたの。昔からずっと一緒で、いろんなあんたを見てたからかな」
それは、俺にとって突然の告白。
長い時間を彼女と過ごして、それでも言い出せなかった言葉。
「あたしはいついなくなるかもわからない。だから、これだけはちゃんと言いたかったの。最後まで後悔しないために」
今の関係が崩れるのが怖くて。そして、彼女を失うのが怖くて。
いつまでもあんな日々が続けばいいとさえ思っていた。
だからだろう。急にあんなことを言ってしまったのは。
彼女がもし完全に回復して、新しい人生を歩んでいけるようになったなら、彼女の人生に俺は必要なのかと。そんな思ってもどうしようもないようなことばかり考えてしまっていた。
だけどそれは間違いだった。
大事なのはまず自分の気持ちを伝えることなんだと、今ようやく気付かされたんだ。
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