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彼女は言ってくれた。自分の本心を。
だったらこっちも言わないわけにはいかない。
「かっこ悪いなぁ……、俺」
「……ほんとにね」
そう呟いて一歩離れてから、彼女は意地悪そうに笑って見せる。
「それで、……返事は?」
そんなのはとっくの前から決まっている。
「俺も、お前が好きだ。もうずっと、ずっと前から、好きでした」
やっと言えた。ずっとしまっていたこの気持ち。
「だから、これからも俺とずっと一緒にいてほしい」
そういうと、彼女はまた瞳いっぱいに滴を溜めた笑顔で、こういう。
「――はい、喜んでっ」
それから彼女がゆっくり顔を近づけて、俺にそっとキスをした――。
彼女の暖かで眩しげな笑顔を背に、引いた雨雲から茜色の空が顔をのぞかせる。
「雨、上がったね」
「……だな」
すっかり雨の止んだ地面には、無数の桜の花びらが散乱している。
「そろそろ桜も終わりかな……、花散っちゃたし」
「かもなぁ……。ん、いや、そうとも限らないかもな。ほら」
そう言って俺が指をさす。
そこには、激しい豪雨の中で、唯一散りはしなかった花が一輪。
小さく弱々しくも、木の枝に必死にしがみついて離れはしなかった。まるで、誰かの願いに繋ぎ止められているかのように。
「まだもう少し続きそうだな」
「そうだね。ならもう少し、この季節を楽しまないとね――」
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