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「今日も出かけるから」
第一声がそれだった。
時刻はまだ昼過ぎ。
すでに準備を済ませていた彼女が、腰かけていたベッドから立ち上がってそんなことを言う。
「……はい?」
無論、俺のこの反応はおかしくないだろう。
というか何だこのデジャブ。
「しばらく外出許可がでたから。だからその間はとことん遊ぶの」
堂々とそう言い放つ。そしてすごい笑顔だった。それはもう不気味なくらいに。
「あ……、えっと、そうか」
この時点で俺はもう、考えるのをやめることにした。
どうやら今日は遊園地らしい。
地元にある、休日でも賑わうかどうかの場所。
それでも春休みだけあってそれなりに客は入っているみたいだ。
「よし、じゃあ最初はあれね」
「ん? あれって……もしかしてあれか?」
彼女の視線の先にあるのは、
「そう、ジェットコースター」
すごく楽しそうなのは伝わってくるんだが、最初にそのチョイスなのはどうなんだ。
「最初なんだからもっと緩めのやつでもいいんじゃないか? ていうか大丈夫なのかお前」
「もう、うるさいなぁ。いいから行くよ」
彼女は自然に俺の手を握ると、そのまま半ば強引に俺を引っ張っていった。
その後もいろんなアトラクションに乗って、それから休憩して、また乗ってを繰り返した。
終始引っ張りまわされてかなり疲れてはいたが、ずっと楽しそうにはしゃぐ彼女を見ていると、なんだかこんなのも悪くないと感じてしまう。まぁ、当然といえば当然か……。
それから時間が経つのは割とあっという間だった。
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