ホホエムカノジョ。

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 そろそろ日も暮れ始めてきたころ、 「最後はこれね」  そうして連れてこられたのは、観覧車。  ど定番もいいとこだ。  その後すぐに、俺たちは順番を待つことなく観覧車に乗り込んだ。 「高いね。もうこんなとこまで登ってる」  夕日の差し込む窓の外を見つめた彼女がそういう。 「だな。そういや、気分悪くないか? 体は大丈夫か?」 「もう、それ何回目?」 「ああ、いや、ごめん」 「平気。ありがとう、心配かけてごめん」 「いや、こっちこそごめん。大丈夫ならいいんだ」  久しぶりに遊ぶことができて嬉しいのだろうが、やっぱり元の彼女のことを考えると心配ばかりしてしまう。  だけどそれで彼女が楽しめなくなってしまうのはなんか嫌だ。 「ねぇ」  考え込んでいた俺に、彼女がぽつりと呟いた。 「なんかこうしてると、デートみたいだね」 「……はい?」  視線を戻すと、そこに彼女の笑顔があった。  夕日のせいか若干頬が赤い気はするが、それ以外は普通だ。  かくいう俺は、内心ドキドキし始めている。 「あ……、えっと、急にどうした?」 「いや、なんかね。もしあたしが普通に生活して、恋人とか作ってさ、そしたらこんな感じなのかなぁって」  普通、か……。 「あ、ああ……。そうだな。なんか、相手が俺でごめんな」  冗談っぽくそう言って笑って見せる。 「まぁ、しかたないからあんたで我慢してあげる。光栄に思いなさい」  そう言っていたずらな笑みを浮かべる。 「はいはい、そうですか」  そんな彼女の様子を見て、俺は呆れたようなため息を一つ。 「なんてね……、むしろ嬉しかったり……」 「ん、なんだって?」  何かをぽつりとつぶやいたかと思うと、急にあたふたし始める彼女。 「あ、いや、えっと、何でもないからっ……」  最後に顔を背けた彼女の頬は、やっぱり少し、赤いような気がした。
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