マサキくんのはなし。

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「人間の仕事ってのも、色々あるんだよ。外に出ていかなくちゃできねぇ仕事もたくさんある。机に座ってりゃいいってなもんじゃねえ。特に、お前のご主人様であるカナさんは接客業だ。お店に行って、レストランでお客さんに食事を運ぶのが仕事なんだぜ?家にいたら仕事になんねーだろうが。お前もう二歳にもなってそんなこともわかんねーのかよ。まだまだお子様だな!」  そこまで言わなくてもいいじゃないか、と僕はしっぽをだらんと下げてしょげてしまう。まあマサキくんは僕より二つも年上の猫というだけあって、いろんなことを知っている。彼が言うことは大概正しいのだ。そして、普段は厳しいことも言う反面、きっちり僕の心にもよりそってくれる素敵な先輩でもある。  真っ白なふわふわの毛並みが、今日もベランダから入ってくる光を反射して眩しい。オス猫の割に身体は小さいが、近所の猫達のボスをやっていたというだけあって威厳が違うというものだ。そんな彼が今は自分一匹に構ってくれるのだから、実に有難いと言わざるをえない。 「で、話は戻るけどな。病院が嫌いという気持ちは俺にもよーくわかるんだ。車に乗る=病院に行くフラグが立つから嫌だ、なんとか回避したいってんだろ?」 「それそれそれ!」  僕はうんうんと頷いて言った。家の中で買われている犬であることもあって、僕の交友関係は極端に狭い。散歩の途中で会う数匹くらいしか犬友達もいないから、あんまり情報交換もできないのである。  何が悲しいって、その数少ない犬友達が、誰一人“病院やシャンプーが嫌”だと思っていないということなのだ。車に乗せられて病院に連れていかれている犬も三匹ばかりいたが、その中には“病院に行くと帰りにドックランに連れていってもらえるからむしろ嬉しい”なんて者さえもいた。この苦痛を誰にもわかってもらえないなんて!と嘆き悲しんでいた時、僕の唯一の“猫”友達であるマサキくんが同意してくれたのである。  この感動、きっと人間にはわかるまい。 「病院帰りにどこか寄ってくれたり、美味しいもの食べさせてくれるっていうなら僕もここまで拒否らないけどさあ!カナさんそういう配慮全然してくれないんだもん!嫌な思い出しか残らないに決まってるじゃんか!」
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