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マサキくんの作戦は、効果覿面だった。
いつものように僕の動画を猫撫で声で撮り始めたご主人様は、突如携帯を放り出して絶叫したのである。
「待って、ねえ待ってやめて!?どこ見てんの何見て吠えてんのクマ吉――!?」
僕がやったことは単純明快。
撮影が始まると同時に、マサキくんに向かって吠えたのである。そしてマサキくんがタイミングを合わせて、すぐ傍にあったゴミ箱をひっくり返したのだ。
「いやああああポルターガイストおおお!おばけえええ!」
作り声をするのも忘れて、怖がりなカナさんは風呂場の方に逃げ出した。ちょっとやりすぎたかな、と僕は少しだけ反省する。
「……そういや、忘れてたや。マサキくんって、幽霊だったね」
「おう。地縛霊ってやつだな!このマンションの前の道路で車に撥ねられて死んだ立派な野良猫様だぞ!」
「こんなポジティブな地縛霊、普通いないと思うんだけど……」
カナさんに飼われているでもないのに平然と家に入ってくるしカナさんには見えてないし、壁もすり抜けるからまあ彼が幽霊であることは疑っていないが。
僕は本当に、不思議で仕方ないのである。
――人間って、なんでそんなにユーレイを怖がるのかなあ?そこらへんにいっぱいいるのに。
人間が知らない事実。
犬と猫には人間の言葉がわかり、文字が読める。ついでにそのへんにいる幽霊が全部見えている。ただし言葉は話せない。なので。
――カナさんが逃げ込んだお風呂場にも、女の人の幽霊が三人くらい棲み着いてるんだけど。……まあ、知らない方がいいこともあるよねえ。
僕はマサキくんと顔を見合わせ、けらけらと笑ったのだった。
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