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連絡先を教えると、うららはまだ何か話したそうにしていたが、秀は再び逃げるようにして風呂に入った。
上がってくると、流石にうららもリビングにはいなかった。
また、隣で寝ているのかな……。
壁で隔たっているとは言え、赤の他人の少女と数十センチしか離れずに並んで寝るのは変な気分だった。
景冬から連絡が入っていないかと期待して、ベッドに投げてあったスマホを確認すると、うららから連続でメッセージが送られてきていた。
『秀さん。急にお邪魔して、ご迷惑おかけしています。でも、雪ちゃんから聞いていたとおりのかっこいいお兄さんで、お会いできてうれしかったです。私は明日、帰ります。写真とブログ、見てください』
そうして、何枚か写真が送られて来ていた。
一緒にライブに行ったときのものらしい。
ショートカットの雪子と、ロングヘアーのうららが黒いライブTシャツを着て写っている。
Tシャツから出た腕は、二人とも折れそうなくらい細い。
冬服に隠れていてわからなかったが、うららも相当細いようだ。
自作のうちわに、ペンライトを持って、いかにも楽しそうだ。
こうやって見ると、なかなか二人とも美少女だなと思った。
――信じられないな。本当に、もういないんだ。
写真の中では永遠に雪子は笑っているのに、この世にはもういないなんて。
写真や動画はかえって、残酷かもしれないとさえ思う。
雪子を忘れたいわけではないのだ。
ただ、幸せだったころと今のコントラストがはっきりとしすぎてしまう。
それでも、一度見出すと、ずっと見入ってしまう。
生きていた頃には、こんなにじっくり妹を見ることなんてなかったのに。
不意に死に顔が思い出されて、画面を伏せた。
最後に本物の雪子をじっと見つめたのは、もう息をしない彼女になってからだった。
――そうじゃない。俺が思い出したい雪子は、生きていて、動いていたころの雪子だ。
ゆっくりゆっくり、秀の中の雪子の扉が開く。
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