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 『つらら』の日記には、それ以後頻繁に動画サイトのURLが貼られるようになっていた。  いくつか動画を開いて観てみたが、どれもうららがピアノを演奏しているものだった。  素人目にも、中学生にしてはかなりの腕前だということがわかる。  曲は主にアイドルグループの曲や『ニット』が話題に出した映画音楽で、しかもどれも『つらら』のアレンジによるものらしかった。  たしかに実際のうららは、少女らしさの中にどこか理知的なものを感じる。  一人で東京までアイドルの遠征に来てしまった上、ネットで知り合った友だちへ線香をあげに来てしまうような行動力も持ち合わせているところは、とても十五歳とは思えない。  行動だけ見ると軽率な印象もするが、声なきコミュニケーションの仕方を見ても、溢れる知性が顔を出している。  雪子が高校生になっていたら、やはりこんな行動力を身につけていただろうか。     そもそも、雪子がわりと読書家だったことに秀は気づいていなかった。  年頃の妹の部屋に入ることは、生前はほとんどなく、亡くなってから見た彼女の部屋の本棚は、ほとんど漫画しか入っていなかった。  今度、母親に聞いてみようと思った。  雪子の生前を懐かしむような話題を秀から出すことは、一度もしたことがない。  それによって沸き上がってくる両親の悲しみに、秀が耐えられないからだった。  でも、なぜだろう。  今日のうららを交えた夕食を経て、ブログを見て、秀は今までと違う雪子の懐古を感じていた。  
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