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 翌朝、秀が家を出るまでにうららは起きてこなかった。  意外と朝寝坊なのだな、と自転車を道に出しながら秀は思った。  今日は、うららが帰る日だ。  もっとあの三人の関係のことを聞きたかったのだが。  あのブログを全部読んだらうららにメールでも送ってみようと思った。  そして、できることなら『ニット』にも会ってみたい。  父や母ともあのブログの話をしよう。  今日は、景冬と一緒にシフトに入れる日だ。  両親に話す前にまず、バイトが終わったら景冬に全部聞いてもらおう。  こんな話、できるのは景冬だけだ。  学校の友だちにはできない。  景冬がいてくれて、よかった。  そこでふと、雪子たちのことばを思い出す。  学校の友だちには、ないしょ。  秘密の友だち。  ああ、俺にとって景冬は『雪降る世界』なんだなあと、身を切るような寒さの中で秀は思った。    空は、曇っている。  小さな雪でも降ってきそうだった。
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