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 バレンタインか。  景冬は何をくれるだろう。  ホワイトデーには何を返したらいいだろう。  今年はちゃんと、雪子にもホワイトデーをあげよう。  贈り合う。  それは、イベントだからだと思っていた。  そうじゃない。  大事な人だからだ。  景冬が大事だ。  まるで息を吐くように自然に秀を支えていてくれる。  秀はそれを、息を吸うように自然に受け取ることができる。  でもそれがなくなってしまったら、秀はもたないだろう。  雪子も大事だ。  決して「大事だった」のではない。  今も、前からもずっとずっと十五年、秀のそばで一緒に育ってきた。  それなのに、知らないことがまだ沢山あって、今更知りたいと思う。  今更、妹が愛しいと思う。  取り立てて可愛い存在だなんて思ったこともなかったのに。  俺たちは兄妹だったんだ。
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