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「すみません、電話繋いだままで待機してください」
景冬は男性にスマホを返す。
みっともなくおろおろする秀には目もくれず、景冬は見つけ出したうららのスマホを操作する。
その手は白く、震えている。
寒さのせいではないことくらい、秀にもわかった。
しゃがみこんだ景冬は、苦しむうららの傍らで自分も心臓を強く抑えている。
秀の鼓動も速い。
膝までガクガクしていた。
「あ、もしもし、私、うららちゃんの友達です」
うららの親の、どちらかが出たらしい。
ここで初めて景冬の声が詰まった。
泣くのを堪えて、必死に緊急事態を伝えている。
「遅くなりました!」
駅に走っていった女性が、AEDを抱えた駅員と一緒に戻ってきた。
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