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女性と駅員はうららに声をかけながら、彼女を仰向けにしようとする。
だが彼女は苦しみのあまり横向きでうずくまったまま、なかなか体勢を変えることができない。
そうこうしているうちに、サイレンが近づいてきた。
とんでもないことになったという焦燥感と、プロの助けが来てくれたことの安堵感をないまぜにした秀は、やはり見守ることしかできない。
景冬はここでも救急隊員に状況を説明し、うららの親と繋がった電話を手渡した。
隊員たちは、慣れた手つきでうららに声をかけ、担架に乗せ、心電図や血圧計をつけている。
「秀ちゃん、一緒に救急車乗って」
「うん。そうするけど、景冬。もしかして」
景冬がこくんと頷くと、その鼻先から涙が一粒落ちた。
「私、『ニット』なの」
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