4人が本棚に入れています
本棚に追加
情報量が多い。
乗り込むと、うららは今しがたよりもっと苦しそうにしている気がした。
二人は隊員に促され、シートベルトをする。
「意識混濁してきてます。名前を呼んであげてください」
ぎゅうっと胸を鷲掴みにされたような気がした。
だめだ。
うらら。
行くな。
「つららちゃん。つららちゃん。すぐに病院に着くからね。大丈夫だよ。お母さんとお父さんも、すぐ来るからね。雪ちゃんのお兄ちゃんもいるよ。つららちゃん」
うららのほうに身を乗り出して、景冬が呼びかける。
「頑張れよ。もうすぐ病院だから。頑張って」
秀は、彼女をなんと呼んだらよいか戸惑い、けれど、もう二度と大切なものを失いたくない想いで呼びかけ続けた。
堪えてくれ。
どうか、君は。
せっかく会えたのに、景冬にも君にも聞きたいことが沢山ある。
君たちの秘密の話だけじゃない。
雪子の話を、聞かせてくれよ。
そして、そのきれいな指で、俺と景冬にピアノを弾いてくれ。
頑張れよ。
だって俺たちには、俺たちには、未来があるはずじゃないのか。
最初のコメントを投稿しよう!