第三話 家族っていいです

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第三話 家族っていいです

うわーん! と、ものすごい鳴き声が下から聞こえてきました。 痛いよ、痛いよーと言っています。 ゆっくり階段を降りて行きました。 「どうしたの?」 「何でもない、暗いから二階に行くなったって言ったのに、階段から落ちたんだ」 「だって、ねえたんとにいたんが―」 「さみしかったんだね、そんなときは大きな声で呼んでいいんだよ」 「だってねえたんねんねしてる」 「ありがと」 「ほらケツだせ」 イケメンがケツ出せって。 お尻痛いよー!と言って出したお尻は真っ赤でした。 「痛くても我慢しろ!」 「もういい、痛い、痛い!」 お尻に湿布薬をぬりぬりです。 これはビワの葉を煮詰めたものでいい匂いです。 「何騒いでるんだ」 イケメン二号がきました。 「階段から落ちたんだって、寂しくて会いに来たかったみたい」 「ばかだな、大声で呼べよ」 クックックッと笑う父さん。 「なに?」 「なんだよ父さん」 「イヤー兄弟だなって」 「おかしい?」 「なに笑ってんだへんなの、かあちゃーん」 明日から学校です、父さんの松ば杖をついて、何とか行けそうです。 問題はトイレです。 洋式になれると和式はきついです。 兄ちゃんは呼びに来いと言っていましたが、それは無理そうなので、メリーに頼もうと思います、彼女とは同じ教室みたいです。 朝、母さんが髪をすいてくれました。 まだ不安は残ります、私は、あいつらから狙われているんです。 「これならどう?」 小さな鏡を覗き込みます。 「うわー別人、お母ちゃんありがとう、素敵」 整髪料なんかはありません、でもツバキの実から油を取りました、それを髪に少しつけ、お団子です。可愛いです。天パは隠せました、でもどうなる事やら。 鏡は、はんだ付けをした液がガラスについたもの。裏返したときに、顔がぼやけて映ったんです。ああ、これだと思い、ガラスを砥石で研磨、でもこれじゃダメだから、前もって作ってあったものにそれをはめるようにして作ったの、小さなコンパクト、できたのをみんなで覗いたわ、これで桶に貼った水の鏡とはおさらば。 まあ鏡のおかげもあって温泉は夜でも明るいのです。 「チャーム」 お母さんに呼び止められました。心配そうな顔です。 こんな足、無理して学校に行かなくてもいいというのです。 折れたほうは、まだつながっていません、しっかり固定して、我が家のコンクリートで固めてあります。 「何かあったら」 「お母さん、大丈夫、何かの時は大きな声を出して助けてもらう、こんな足じゃ逃げることもできないもん」 無理はしない、いいわねと約束されました。
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