安楽島真が見た涙

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安楽島真が見た涙

 安楽島真(あらしままこと)は下駄箱でクラスメイトの哀川るいが泣いているのを目撃した。  彼女は一通の手紙を握っていた。手紙にはハートマークのシールが貼ってある。明らかにラブレターだった。  こっそり背後から差し出し人の名前を確認すると、隣のクラスメイトの人気者、一喜憂一の名前が書かれていた。 「へぇ、一喜からラブレターもらうなんて、すごいじゃん」 「ひっ?!」  思わず声をもらすと、哀川は安楽島の存在に気づき、悲鳴を上げた。この世の終わりのような表情をしていた。 「そっ、……そんなことないよっ!」  哀川は顔を真っ赤にして、逃げるように走り去っていった。  ラブレターは鞄の奥に押し込み、誰にも見られないよう隠していた。 「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……」  安楽島は、哀川が一喜からのラブレターをもらって喜んでいるのだと思った。  あの涙は嬉し涙だ。  感動して泣いてしまったんだ。  それを俺に見られて、恥ずかしくなったんだ……と。 「朝からいいもん見れたなー」  安楽島は楽しそうに靴からスリッパに履き替え、教室へ向かった。
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