1人が本棚に入れています
本棚に追加
安楽島真が見た涙
安楽島真(あらしままこと)は下駄箱でクラスメイトの哀川るいが泣いているのを目撃した。
彼女は一通の手紙を握っていた。手紙にはハートマークのシールが貼ってある。明らかにラブレターだった。
こっそり背後から差し出し人の名前を確認すると、隣のクラスメイトの人気者、一喜憂一の名前が書かれていた。
「へぇ、一喜からラブレターもらうなんて、すごいじゃん」
「ひっ?!」
思わず声をもらすと、哀川は安楽島の存在に気づき、悲鳴を上げた。この世の終わりのような表情をしていた。
「そっ、……そんなことないよっ!」
哀川は顔を真っ赤にして、逃げるように走り去っていった。
ラブレターは鞄の奥に押し込み、誰にも見られないよう隠していた。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……」
安楽島は、哀川が一喜からのラブレターをもらって喜んでいるのだと思った。
あの涙は嬉し涙だ。
感動して泣いてしまったんだ。
それを俺に見られて、恥ずかしくなったんだ……と。
「朝からいいもん見れたなー」
安楽島は楽しそうに靴からスリッパに履き替え、教室へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!