哀川るいの涙④

1/1
前へ
/9ページ
次へ

哀川るいの涙④

 中庭にたどり着くと、ちょうどチャイムが鳴り響いた。  一喜君は授業をサボるつもりらしく、チャイムが鳴っても木に寄りかかったまま動かなかった。 「一喜君」  私は一喜君に近づき、恐る恐る声をかけた。自分でも声が震えているのが分かる。  一喜君は私に気がつくと泣き腫らした目を向け、ハッと木から起き上がった。 「あ、哀川……」  私は震える両手をグッと握りしめ、口を開いた。 「あのね、一喜君。私、一喜君に伝えなきゃいけないことがあるの」  口の中が異様に乾く。  心臓の音が、うるさいくらいハッキリと聞こえる。  呼吸が荒く、息が苦しい。  緊張で涙が出そうになった。 (ダメ……ちゃんと、一喜君に伝えないと)  私は緊張を和らげるため、胸に手を当て、深呼吸をした。ほんの少しだけ、心が落ち着いた気がした。  私は意を決して、一喜君に言った。 「私……一喜君が好き。本当は一喜君からラブレターもらって、すごく嬉しかった。どうか、私と付き合って下さい」  一喜君はぽかんと口を開いた後、満面の笑顔を浮かべ、頷いた。 「もちろん! 俺も哀川のことが大好きだよ!」  その瞬間、私は喜びで胸がいっぱいになり、目には涙があふれた。  安楽島君が勘違いした時とは違う、本当の嬉し涙だった。  ふと教室を見上げると、安楽島君が窓から私達を見て、泣いていた。  私が手を振ると、安楽島君も笑顔で手を振り返してくれた。一喜君も安楽島君に気づき、手を振る。 「彼、君のクラスメイトだよね?」 「うん。私の告白を応援してくれたの。泣いて喜んでくれるなんて、本当にいい人だよね」  私は背中を押してくれた安楽島君に、心から感謝した。  安楽島君にも好きな人はいるのかな? もしいるのなら、今度は私が安楽島君の恋を応援してあげたいな。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加