白陶に山吹

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ふ、と意識が浮上する。 …寝てないのに起きることってあるよね。 一瞬意識が途切れるみたいな。 ごはんを食べたあとの授業中みたいな。 くぁあ、と欠伸をひとつ。 どこまでも続きそうで退屈な白い廊下を見やると、自然と半目になってしまう。 金かけ過ぎなんだよなー。 や、綺麗なのはいいことなんだけどさ。 でもなんかこう、 無機質な感じがするというか。 単調なんだよなぁ。 心の内にそんな愚痴を吐露しながら、のろのろと自室へ向かう。 と、 長〜い廊下の先から微かに呼び声が聞こえて、思わず顔を顰めて耳をそばだてる。 「まーたあいつか。」 よく飽きないよなー、ほんと。 そんな毎日毎日来なくっても、僕は居なくならないっての。ね。 平安時代じゃないんだからさぁ。 予定変更、っと。 サンルームでお昼寝でもしようかな。 「…あ。」 回れ右した視界の端にコロコロと転げていくもふもふが見えて、思わず笑顔になる。 駆け寄って両手で掬い上げると、それはふわふわの毛に埋もれた短い手足をきゅっと縮めて動かなくなった。 しばらくして、薄灰色の毛と同じ色のつぶらな瞳がふたつ、そっと覗く。 わぁ、かわい。 「…もふもふも一緒にお昼寝しようねー。」 うりうりと頬のあたりをつつけば、気持ちよさそうに目を細めてぷぁ、と小さな口をひらく。 か、かわいい〜〜〜。 僕はもふもふを捧げ持ったまま、上機嫌でまた歩き出した。
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