それだけの話

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僕は家を出たいと思っていました。 夜な夜な母と父の抱き合う声が聞こえるのでノイローゼ気味でした。 だからお金を貯めさせて欲しいと言いました。 すると母は「私を捨てるの」と言いました。 「ここまでせっかく育ててきたのに」と。 しかし夜の仕事をずっとしている母はその頃には夜だけでなく昼も酒を飲むようになっていて、まともな思考回路の時がありませんでした。 ある時は泣き喚き、ある時は僕に暴力を振るいました。 丸まって耐えるしかない僕は、早く終われとそれだけを願っていました。 父はそんな母を見て僕を見て笑い「世間はそんなに甘くない」と言って僕を蹴りました。「金を手にするのは大変なんだぞ」と。  仕事もせず昼日中から暴れる父と母に殴られ蹴られる時、僕はなんのために生きているんだろうと思いました。
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