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0 とある始まり
「もう、だめだ………」
「ガッハハハハ。人間ども、わが羊魔王キルベソオの力の前に滅びよ!」
立派な巻き角を持ち、羊の顔に黒い体毛に覆われた魔獣。体型は人の十三倍、黒い翼を広げればさらに四倍はある大魔王は飛び上がった。
爪をたてた獣手に魔気を溜め、黒い炎の塊を城の中心に向かって放った。
城下では建物の崩壊で火災が起き、配下の魔族たちが大暴れし、兵士や剣士が応戦するものの多くの犠牲者が出ている。
七人の魔法師たちが巨大な魔方陣の盾を形成して炎の塊を防いだのだが………。衝撃で亀裂が生じた。
「ガッハハ、脆い、脆いな。それではこれは止められないぞ、終わりだ!」
両手でさらに威力を倍増した強い炎の塊が一直線に、魔法陣の盾めがけて放たれた。
受け止めはした。
亀裂が大きくなり、食い縛る魔法師たちの顔に疲労と限界が訪れようとしていた。
「あきらめたら、だめー!!」
城から現れた白服の幼女。放たれた魔方陣が魔法の盾と同化すると、たちまち亀裂が修繕されていく。と同時に巨大化して、羊魔王に向かって押し上げる。
「何だとーーーー!!」
大魔王の前まで迫った魔方陣は発せられる魔気を吸い込んでいく。
「馬鹿な!この羊魔王キルベソオが人間に、こんな子供などに負ける筈がないのだ!」
大魔王の体から強い黒炎が湧き出て、魔方陣の勢いを止めて再び押し返した。
「見たか、これが羊魔王キルベソオの………」
一層、大きくなる魔方陣。
「バ・カ・な…………!?」
大魔王は再度押しきられ、空高く吹き飛ばされて跡形もなく消えていった。
暗闇の空が明けて、青い空に太陽の光が差し込めた。残っていた魔族の勢いも急に失せ、全て討伐された。人類は救われたのである。
大魔王キルベソオを倒した幼女は伝説となる………。
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