1 聖少女マリヤ

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1 聖少女マリヤ

もう、ダメだ~。 殴られて意識は薄らいでいる。やっと稼いだおカネを手にして家に帰る途中、人相の悪い三人組の強盗に襲われたのだ。 大人がいきなり子供を容赦なく痛めつけ、頑張って稼いだおカネを奪っていく世の中。人間の本性は平気で人を傷つけ、常に己の欲望を優先するものであると誰かが言っていた。その通りだったのか。 目に血が入り込んだのか、よく見えない。拭おうにも体中が痛くて………。手が動かない、いや、今や感覚さえない。ダメだ………。 寒い?こんな暗い路地裏の冷たい石畳の上で僕の一生は終わるのか。はぁ~、短い命だったな。今度生まれ変わったら、人の為に戦う強い勇者にでもなりたいな~。 「もし、すみません。意識、ありますか~?」 臼ぼんやりと開けた目に、白いシスター服を着た少女が僕の顔を覗いている。 天使が僕を迎えに来てくれたのか〜。そうだったら嬉しいな~。 意識が薄れていった………。 目が覚めた………? 温かくて、何かいい香り。柔らかい感触が何とも気持ちいい………。 はあ!?これは、まさか!幼き時に母さんがよくしてくれたあの懐かしき、膝枕というものじゃないのか! 「お目覚めですか~」 真上に白いベールをかぶった少女の顔がある。彼女の膝枕なのか!?僕は瞬間に身を起こしたのち、何度も頭を上下に動かした。 「すみません、すみません」 少女はきょとんとしている。 「大丈夫そうですね、良かった~」 そう言ってにっこりと笑った。僕の心臓がばくばくしている。この気持ちは………?
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