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「お言葉を返すようですが………。一人を助けられないで、どうして大勢を助けられるでしょうか」
「詭弁じゃ。理想に過ぎない。人が神ではない限り、全員を救うことなど不可能だ。世の中は小を切り捨て、大を生かすことが定石である」
「小とは誰のことですか?より弱き者を救うことこそ、人の尊さではないのですか。その時の一部の権力者しか生きれない世や国に、どれ程の価値があるのでしょう」
「全てを悟っているつもりか。そんな甘いことで世の中が廻るわけなかろう。人が成長する為にも、人は戦って勝ち続けなければならない。負けた弱者に慈悲をかけるほど、世は甘くないのだ」
「その成長の先にあるものは何ですか。世の中は弱者は死んで当たり前、勝者しか生きてはいけない所だとある盗賊が言っていました」
「私がその盗賊の考えと同じだと申すか!」
わぁ~。何だか論点が大きく、ズレていないか。マリヤとガクキサスさんと精神論でやり合うなんて。何とかしないと………。
「もし上級の魔物が現れても心配はいりません。何故なら英雄と呼ばれた美剣士がこの国に滞在するからです」
それって、まさかー?
僕はカノンを見た。僕だけじゃない。マリヤも、マリヤに釣られて全員が一斉に見た。
「わ、私………!?」
まさか自分に振られるとは思っていなかったようで、カノンは唖然としている。
「経験豊富で強いカノンさんが加われば、魔物討伐に何の支障もないでしょう」
「ち、ちょっと、マリヤちゃん。確かにあるとは言ったけど、決して自慢できる倒し方ではなかったのよ。なのに、 どうして簡単に倒せるみたいに言っているの?」
カノンはマリヤに小声で呟き、ひきつった顔であたふたしている。
大丈夫か?
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