10.再生

26/46
前へ
/419ページ
次へ
「それでラジオ、どれくらい人集まるの?」 恐る恐る聞いてみる。どれくらいの人が陸を見つけてくれているのか。 「今日は土曜日だからまぁだいたい100人前後かなぁ」 「そんなに来るの!?」 てっきり数人程度だと思っていた。 「俺のアカウント、フォロワー結構多いよ」 自慢げにスマホを見せられる。ツイッターのフォロワーが数万人。 「凄い!」 「だろ? おかげでここ最近はSNS経由で依頼が爆増」 「すご……」 陸はこの世界で生きて黒いものに飲み込まれず、妥協せず、自分の信念の元ひたむきに努力をしてきた。そして届くべき人に届き、結果を出している。 「でも、ラジオで内情話したりとかして同業者の人に怒られないの?」 「怒られまくり。嫌がらせとかやばいよ」 「えー!? 大丈夫なの……?」 「まーなんとかね」 陸は2時間ほど生配信を行なった。つらつらと語るだけなのかと思いきや途中で質問コーナーを挟んだりと、飽きさせない構成。また、他の探偵事務所に酷い目に遭っていると思しきリスナーさんの相談に親身に乗るなど、客観的に聞いていて好印象だった。 ラジオだけじゃなくyoutubeやブログなど各種媒体で探偵の情報や手法を発信しているようだ。コメントなどを読んでいると、思いの外探偵の仕事に興味がある人が多いということも分かった。 今まで誰もやらなかった、探偵の手の内を明かすことで興味を引いて、真摯な面を見せることでファンを作る。上手い。 「操、飲む? 日本酒だけど」 優佳が今夜は眠るそうなので、操もお猪口一杯だけ付き合う。 「さっき考えてたの。どうしたらもっとあの人たちが地獄に落ちるのかなって」 操は、クライアントを救いたいという想いももちろんあるが、正直なところまだ『不倫した側を破滅させたい』という半ば私情の方が強い。 「虫も殺せないほんわかちゃんの発言とは思えないなぁ」 「本気だよ」 彼らに敬を重ねている。 「いいと思う、むしろ最高。これからも助手として頼むよ」 「でも、私は今後何をすればいいの? 今のままだとできることなんか少ないでしょう?」 尾行も張り込みもできない操に一体なんの助けができるのか。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13206人が本棚に入れています
本棚に追加