1.疑惑

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「そっか。痛いの代わってやれなくてごめんな……」 「ううん……」 「タクシーで家まで送るから、帰ろ」 家に戻ると敬が部屋着と、お腹と背中をあたためるためのホッカイロを持って来てくれた。操が着替えて横になれば、いつでも飲めるようにと常温のペットボトルの水と愛用してる生理薬をサイドテーブルに置いてくれる。 操の生理は月によっては起き上がれないほど重い。そのため敬は痛みがなくなる3日目までは特に手厚く扱ってくれる。『今はホルモンバランスが崩れてるから何もやらなくていい』と、食事や家事も代わりにこなしてくれる。 父や周囲を見て男性の生理への理解がどの程度かは分かっていたから、正直ここまで理解してくれる人もいるのだなと感動したものだ。 敬の優しさは今日も変わらないのに、心の中は晴れず不安ばかりが募っていた。 「俺戻るから、何かあったらすぐに呼んで」 「敬……」 立ち上がって背を向けた敬を思わず呼び止める。声が乾いている。 「ん?」 ――写真見たよ。あの人は誰? 「操? どうした?」 浮気なんかしてないよね?――聞きたいのに、問い詰めたいのに、喉に引っ掛かり言葉にならない。なんでもないと誤魔化して笑うしかなかった。 この半年間の夫婦がどうだったかなど考えなくとも分かる。何も変わったことはなかった。夫は優しく、夫婦生活もありすぎるくらいにあり、愛されている自信もあった。
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