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なんだソレ、と同時に吹き出し、それからしばらくカメラや最近の作品について話した。
「ねえ、一回このカメラ使わせてよ」
「うん。いいよ……あっ!」
茜音が電源を入れようと手に取った自分のカメラを急いで引き寄せる。
「中身、整理しとく。それからなら」
あまりの慌てように茜音はなにかを感じ取り、ニヤリと笑った。
「なにが入ってんのかなあ……ねぇ?」
「べ、別になにも。でもこういうのも個人情報だろ」
息吹はカメラケースにカメラを突っ込む。
まだ消していない蒼依の写真を見られたくない。やましい気持ちよりも、自分だけの宝物を知られたくない、そんな思いかもしれない。
「ふふ、絶対好きなコだよね。それ。そっかあ、息吹が明るくなるわけだ」
(女ってすぐこれだ……)
容赦なく人の気持ちを探り、すぐに愛だの恋だのに繋げて揶揄う。
けれど不思議と悪い気はしなかった。「好き」という言葉は、茜音からの言葉でさえ心を明るく照らす。
茜音が言う「好きな子」とは意味が違うだろうし、やはりまだこの気持ちに名前は付けられない。でも。
(俺は、アオが好きだ)
心の中、息吹は一文字ずつその言葉を噛み締めた。
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