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空の色が太陽の光によってコントロールされているのは周知の事実だ。
太陽光は虹と同じく赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色で構成され、それぞれの波長の差が空の色を決める。
例えば「青空」
青という色は赤に比べて波長が短い。波長が短いほど光の散乱は強く、色が多方面に広がり、結果「青」が強く目に残るのだ。
「ちなみに紫色はもっと波長が短いんだけど、人間の目は紫色を感じにくいんだ」
昼食後、遠藤伊吹は屋上の一角に敷いたシートに仰向けになり、真新しいミラーレス一眼カメラを天に向けながら言った。
「ふーん。習ったことある気はするけど……物理範囲? まあいいじゃん。理由なんて」
息吹の隣で同じように仰向けになっていた泉蒼依はゴロンと横向きになり、あくびを一つ落とす。
「……泉が聞いてきたんでしょ」
「だってさ、空なんか見てたら言いたくなるじゃん。’’先生、お空はどうして青いんですか?’’ ってさ」
十六歳というには随分と発達した体を縮こまらせ、二つ目のあくびをした蒼依は吸い込まれるように眠りに落ちていく。
「信じられない。こんな騒がしい所で眠れるなんて」
対して、細身で身長も標準に少し足りない息吹は、少しだけ臀をずらして蒼依との間隔を取り、彼の安らかな顔を見ながら小さな溜息をついた。
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