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中学時代の茜音は息吹と変わらない長さの髪でパーカーにジーンズ。今と違ってボーイッシュで、一歳違いの二人は双子のように似ていた。
(蒼依が知りたかったのは俺じゃない。
茜音だ)
会話を重ねる中で早くには気づいたのだろう。出会ったのは息吹ではなく姉の方だと。それでも蒼依からは無神経に再会を頼まれたりしなかったし、息吹への友情も感じていたのは間違いないと信じられる。
(でも、でも茜音が居なければ俺がアオの視界に入ることはなかった)
窓に激しく打ちつける雨粒が自分に向かって刺さる気がした。
蒼依だけは自分を見つけてくれたと思ったのに。紫色のような届かない光の自分を探し出してくれたと思っていたのに。
(茜音は赤だから)
こんな時に、なぜか出会った日の会話内容が頭を過ぎる。
夕焼けが茜色なのは、太陽が沈んでも遠くまで届く赤色が目に入りやすいからだ。
(蒼依はずっと俺の向こうの茜を見ていたんだ)
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