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色濃い二人が惹かれ合うのは当然だ、と会話が弾む二人から逃げて背を向ける。
「息吹?」
蒼依が呼び止めた。
「自転車、見てくるよ」
なんとか声を絞り出す。震えないように気をつけながら。
「いいよ、もうずふ濡れ確定だし、まだ雨が……」
言いかけた蒼依が外を見ると、窓を打ちつけていた雨は既に去っていた。
「大丈夫」
息吹はドアを閉め、できるだけ感情を出さないように、静かに階段を降りた。
外では雲の切れ間から光が溢れ始めている。
やがてそれは広がり、光のカーテンが自転車に乗った露を煌めかせた。
近づくと、その露でさえ空を取り込んで青色に光るのがわかる。
見上げた空はもう青。
なにもかもが青だ。
息吹の心に棲みついた「アオ」と同じに。
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