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息吹は玄関クローゼットからカメラを取り出した。
カシャ
カシャ
連写して、見えるだけの青色を収める。
そして最後に天を仰いだ。
(どうしたって今更この気持ちは消えない。だって「アオ」は意識しなくても視界に入る)
息吹は空を撮りながら一筋涙を流す。
皮肉にも、これまで名前のなかった想いが今、頭上の蒼天のようにはっきりと姿を現した。けれど、涙が出るのはそれが終わったからじゃない。
これから幸せになるであろう二人の横で、笑顔で、その上同性である蒼依を秘かに思い続けていく────その決意と覚悟の涙だ。
どうせもうなにもかもがアオだから。
泣きたいくらいに、みんなみんなアオだから────
もう一筋、涙が流れるのを息吹は拭わなかった。
2020 9 20 完結 妄想コンテストテーマ「私が泣いた理由」
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