可視光線

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 接点のない、クラスも違う蒼依に声をかけられたのは二十分前。  写真部の月例作品の案を練ろうと、アルバイトで得た少ない給料を貯めてようやく購入した自分だけのカメラを抱いて屋上に向かう途中だった。  ────カメラ、凄いの持ってんね。遠藤って空の写真撮ってるよな。いつも貼り出し見てるよ。なぁ、撮影するとこ、見せてよ。  そんなふうに言ったくせに、蒼依は昼食を食べたら撮影を見もしないで寝転がってしまった。昼食中の会話も息吹がどこに住んでいるんだとか、出身中学はどこだったか、などおよそ写真には関係のない話ばかり。 (変なヤツ。ムカつくからドアップの寝顔でも撮ってやろ)  カメラにマクロレンズを取りつけ、絞り値を小さくして蒼依に向ける。
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