可視光線

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(あ……汗)  レンズ越しに、蒼依の鼻の頭に小さな汗の粒がお行儀よく並んでいるのが見えた。  体は大きいのに子供みたいだ、とそのアンバランスさにふふ、と声が漏れて、咄嗟に口を塞いだ。だが、熟睡している様子の蒼依には届いていない。勿論、寝込みを撮影される直前だなんて気づく様子もない。  ────カシャ  子気味いいシャッター音。  息吹は口角を上げて画像を確認する。 (うん、良く撮れてる。風景撮影の為に選んだカメラだけど、泉……綺麗に写ってるな)  モニターに表示された蒼依の寝顔を中指でそっとなぞった。そして、ふと気づく。  綺麗ってなんだよ、と。
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