可視光線

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(いや、綺麗なのは画質の話で別に被写体(イズミ)がどうこう、って意味じゃなくて……俺はなにに言いわけしてるんだ)  脳内一人会話を終了させ、些か挙動不審な自分を誰かが笑ってはいないかと周囲を見渡すが、たくさんの生徒がいるのに誰も息吹など見ていない。  当たり前か、と安心と自嘲の混ざった笑いを鼻に乗せる。  世の中には息をしているだけで人の目をひく人間と、精一杯の行動を起こしても誰の関心もひかない人間がいることを知っている。  息吹は後者だ。  悪目立ちすることもない代わりに誰かの記憶に色濃く残ることもない。さしずめ、色に例えたら「紫」といったところか。  だから。  だから 「遠藤って空の写真撮ってるよな。見てるよ」なんて、瞳を真っすぐに見て言われたら、考える前に頷かずにはいられなかった。
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