可視光線

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(泉は例えるなら青色だな。名前だって依だし)    隣で眠る蒼依ではなく、やはり液晶画面の中に表示された彼を見る。モニター越しであれば直視も可能だと無意識に選択しているのかもしれない。  それくらい泉蒼依は「眩しいヤツ」だった。  話したことはなくても誰だって泉蒼依を知っている。恵まれた体格でバスケ部期待の新人。人懐っこい笑顔に親しみやすい性格。息吹が彼を「青色」と例えたのは的確で、蒼依はそこに居るだけでも人の目をひきつける。 (やっぱり綺麗だ)  通った鼻筋や、眠って瞼を閉じていてもわかる、くっきりした二重のラインと黒々とした長い睫毛。それらは間違いなく男性味を主張しているのに「綺麗」という表現が最もふさわしい気がする。きっとカメラの性能云々ではなく、スマートォンのカメラでもトイカメラでもそう思わせるのだろと認めざるを得なかった。  息吹はカメラを撮影モードに切り替え、当初の目的通り天を仰いだ。  透き通った青い空と秋の始まりを思わせる鈎状巻雲が眩しい。 「綺麗だな、青……」  息吹は呟いてシャッターを切った。
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