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アーサー・メルクリウスが提唱した多重魔法理論を、10年以上かけて研究したジョナサンが見出だした新種の魔法。それが、魔力強奪だった。
きっかけはしょうもないものだった。
ジョナサンは王宮のソファーにダラダラ寝っ転がっていた。
旦那がだらけていて怒らない女房はいない。
やっぱり、ジョナサンは怒られた。
怒られたくはないんだが、怒ったフラさん可愛いなあ。あれ?ああーー出来るかな?
そこでジョナサンは、フランチェスカに魔法をかけてみた。
移動阻害魔法を、もっと精密に、ピンポイントでかけてみた。
例えば、急制動をかけたらつんのめるだろう。
つんのめる筋肉の動きを止めたらどうなるかな?
結果、フランチェスカは寝室でダンスをするハメになった。
「いーやー!何で?!」
移動阻害魔法を使った超絶技巧だった。動きを制すれば、どんなポーズでも表現出来るのだった。
フランチェスカからすれば、非常に不快だった。常に全身がつんのめる感覚は、言語に尽くしがたかった。
「いや、人間が動くということを突き詰めたらこうなった。ヒャッホー!フラパン見えた!うははは!」
「スカート捲りにしてはやりすぎよ馬鹿!」
パンチを顎に食らった。
痛い顎を擦りながら、ジョナサンは考えた。
魔法にしたって俺達にしてみれば運動だよな。フラさんが魔法を使う癖は全部把握してるし、行けるか?
そして、幾つかの改良を経て、ジョナサンの魔力強奪は成った。
自らが産み出した巨大な破壊の痕跡を、フランチェスカは呆然と見つめていた。
「凄いわ。貴方」
「うん。君が、俺を信じてくれたから出来た。ありがとう。愛してるよ♡フラさん♡」
「俺に向ける愛はねえのか?」
とりあえず実験に付き合わされたスライムは、ブスブスと煙を上げて潰れていた。
アーサー、ステラ、魔王と言った魔法のスペシャリストの前で実演したが、誰一人、娘のステラですら再現出来なかった。
やっぱり実験台にされたペシャンコスライムがいなければ、ピュプノスラッグによる幻覚と思われていただろう。
「恐ろしい事を考えたな貴様は。流石にこれは誰にも真似出来ん。勇者の娘はどうだ?」
「凄い。私もまだまだ大雑把だったのね。庶民派魔法を究極させると、トンニュラがこうなっちゃうのね」
「庶民派国王って何だよ」
「誰がトンニュラだごらああああああああ!」
「とにかく、これはウィンシュタット賞ものです。やり方を伝えても、王陛下にしか出来ないのですから」
「ルルコットの後追いはともかく、そんなに難しいことじゃないんだけどな。まあ、呼吸とタイミングが肝だよ。改良したのそこだけだし。相手をキチンと受け入れることが大事だ。ステラを可愛いと思う気持ち。これがないとな?どうだ?パパカッコいいか?パパと魔王とどっちと結婚したい?」
「魔王」
「一息吐く間もなく即答?!魔王おおおおおおおおおおお!ステラの一兆度の炎を食らええええええええええええええええ!」
まあそんなことがあった。
ロージーがお眠なのは、燃費の非常に悪い転移魔法を数回使ったのが原因で。
現在ロージーは、アリエールのおっぱいに顔を埋めていた。
「お前は、俺の可愛いアリエールを怒らせた。アリエールもだが、俺達親子夫婦に喧嘩を売ったのが運の尽きだ」
「ぐ、貴様等親子に売った覚えはない!まだ幼虫ではないか!いずれいい餌を食えば脱皮を繰り返し、いずれ俺のゴキチ○で孕むようになる!そうだ!下半身さえあればいい!メスはゴキだあああああああああああああ!!」
「いや売ったんだ。つまり。出てこいロズウェル!」
「い、いつの間にいいいいいいいい?!虫神の俺を出し抜くだとおおおおおう?!」
ほぼ3メートル前にいた。
父親が買ってくれた、オリハルコンのショートボウをつがえて。
「ロズウェル呼んどいたんだ。ちょうどいいものを持って。俺の子だけあって、ハイディングは凄いぞ」
無音技術に異様に傾倒していたのが、ロズウェル・リトバール・エルネストだった。
「うん。父様の移動阻害が切れる前に、シュート」
白金の弓から発射された矢尻には、あるものが袋詰めされていて、それは、アーレ・ノアーレの口の中で炸裂した。
「何だ?うははは!残飯だあああああああ!ん?んんんんんんんんんん、げっぶあああああああああああああああ!!」
「母様の作った料理が入っていたんだ。効くよ。多分凄く」
「二メートルのゴキが悶絶するアリ飯だ。つまり、人間様にゃあ敵わん。ってことだ」
「ホントにかましますわよ。貴方達」
「腹がああああああ!腹が焼けるようだ!が、こんな毒物などで俺が、が、ギ、ギギギ、ぶるあああああああああああああ?!」
「ルルコットの作った殺虫剤も入ってる。神がギギギぶるあああっていうんだな。今度飲ませてみよう。エラルとかソルスとか。ああ!いた!ゴーマがいたろう!あいつがぶるあああっていうとこ見てみたいな」
「貴様等ああああああああああ!」
「まあどっちにせよ、お前がいると人類が危険だ。だから、悪いな」
「行きますわよ!」
「うん。声を合わせよう。多重魔法展開」
2人は、腕を伸ばし、そして、
『エクスプロージョン!』
「あっばああああああああああああん!!ばる!ーーっす!」
天高くうち上がった虫神は、直径800メートルの巨大な爆裂火球の中に消えていった。
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